講演会 自動視野計における視覚障害評価の考え方 鈴村弘隆先生
現在の身体障害者福祉法の視覚障害等級判定基準の問題点
実際の障害と等級の乖離
自動視野計での判定も認められているが判定法、判定基準が明文化されていない。
GPのⅠ/4=HFA Ⅲ20dBとして評価するが実際の結果とは乖離がみられる
HFAでは30度外の視野の状況がわからない
オリジナルのGPの製造は中止になっている。また検者の技術により結果が左右される。
臨床での検査の主流が静的視野測定に完全に移行されている。
視能率は両眼加算した結果が必要である
視能率の算定に際しての正常視野が既定の指標での正常域よりもかなり広いものが最良されているので、高齢になると病的でなくても認定圏内に入る人が多くいる。
地域によって法律の運用の解釈に差が見られ、転居すると等級が変わってしまう場合もある
地域による解釈の差はたとえば8方向全部10度以内にないといけないというものから、面積が同等であれば15度までの偏心は認めるというものまであり、演者は後者がBetterだと述べていた。
また、中心と連続していないⅠ/4が周囲に点在する場合も輪状暗転と考えてよい。周辺にⅠ/4が存在していても中心10度にⅠ/4がなければ中心の視能率0と考えてよい。
今後の判断法判断基準としては、海外で障害者認定に使用されているEsterman Testを両眼で行うことで
両眼加算の必要性がなくなる。
Esterman Test両眼 は両耳測150度、上方40度、下方60度の120点 10dBのsingle intensity法である。
視能率の計算もせず、上記で100点以下だった場合は1/2以内と判断、60点以下の場合は10度以内の視野狭窄を考え10-2をする。
今後この方法での判定が可能になるようにしていきたい。
いままでHFAのデータしかない状態での評価はかなり難しいと感じていた。片眼ずつ30度を取ってはたして両眼加算で1/2以下なのか否か、またさらに10度の検査を片眼ずつ行う、認定されそうなら役所を通じて認定施設へ行っていただくが、当院でのHFAでの評価と実際の等級には乖離が見られた。患者さんも負担だし、提案する側も不安だしストレスだった。今回自動視野計での明確な基準が提示されたことで、患者さんにも提案しやすくなるし、当院通院中のGlaの方のなかにも認定される方はもっといらっしゃるのではないかと思った。
研修会 色覚異常の診断と今後の在り方 市川一夫先生 村木早苗先生 田中芳樹先生
実態
日本における先天色覚異常者の割合 男性5% 女性 0.2% 女性保因者 10%
かつては小学校4年時に一斉検査が行われていたが、平成15年学校検診の必須項目から削除された。
これは当時の行き過ぎた規制と遺伝疾患が嫌われるという社会的差別の問題に加え、非常に優れた検出能力を持つ石原表により、日常生活に支障の表れにくい軽度の異常も高精度に検出されてしまうという弊害のためである。
色覚検査廃止から10年以上経過した現在、検査を受けず自身の色覚異常を知らない子供が、就職活動時、就職してから進路を変更せざる負えないケースが増えつつある。職業における色覚の制限は少なくなったものの、交通運輸関係の仕事、警察、消防、医師、薬剤師、などで規制がある。
学校での検査も復活したが一斉検査ではなくあくまで任意である。
先天色覚異常者は生来からその色覚の世界で生活しているため独自の色感覚と判別方法を有しており、生活に支障を感じることは少ない。
しかし、視認対象の判断時間、大きさ、環境等が変わることで誤認の頻度は多くなるLEDの光などは色覚異常者には見にくいとされる。
また、様々な眼疾患や加齢に伴い引き起こされる後天色覚異常も昨今問題になっている。実際よりもガスの火が小さく感じるや暗くなると見えていたものが周りと同化して見えなくなるなどで事故の原因にもなりうる。これらの多くは自身の色覚を自覚し、熟知していれば対処することが可能である。
色覚検査の進め方
最も普及しているもの 石原式色覚検査表 世界的にも使用。スクリーニング検査として検出精度(正常か異常かの区別)は極めて高い。正常、異常で違う読み方になるもの、分類のための表は信頼性に欠ける。
改正版Ⅱが2年前に発売された。幼児でも検査可能な環状表が追加されている。
標準色覚検査表SPP パネルD-15の色を使って作られている。1型、2型の分類に優れている。
異常者に読めない表がすくなく、心理的負担が少ない。
1部 先天用 2部 後天用 3部 スクリーニング用。
上記で色覚異常の有無を判定。
続いて色相配列検査(パネルD-15)にて強度であるかどうかを判定する。
さらなる精密検査、型の確定診断はアノマロスコープによる。
色覚異常の中でも程度が極めて軽い場合ではアノマロスコープ以外をすべてパスしてしまうこともあるので注意が必要である。被検者の検査中の応答の様子で予測可能なので良く観察しておく事。
視機能検査で来られた患者さんにも色覚検査が必要ではないかと思った。
色覚異常の患者さんが不安にならない的確な検査説明が重要であると感じた。
色覚検査表は耐久年数が5年とのこと、丁寧に扱うことはもちろんだが、買い替えも検討しないといけないのかとも思った。
大嶋有貴子